こしあん日記

MURAバんく。の土屋のぐるぐるとした日記である。

Moonchildと記憶の車窓

学生の頃、私はまだ愛知県は尾張あたりに住んでいた。

東京で演奏をする機会が生まれきた2019年。

私は何かと東京へ行く機会があれば下道で行っていた。

時間はかかれど、根気さえ強く持てば高速の半分くらいの金額で行けた。

そして、駐車もakippaを使えば1日500円とかで住んだりするのだ。

節約とは、知恵と体力の試練なのである。

 

しかし、車を走らせながら色んな気づきがあった。

トーストとあんこが合うように、納豆と味噌汁が合うように、グラノーラときなこが合うように、音楽も風景と合わせ楽しむとさらに奥行きを揺蕩うことができるのだ。

 

静岡を走る中、車窓に背の高い草が波のように揺れていた。

その時にminmiの「四季ノ唄」が丁度シャッフ再生で流れた。

 

夕陽を照ら点かせる揺れる草波に、スライドするベースが見事にその情景を言い表していた、いや、鳴り表していた(?)。

そして、その音を追う様に入るギターはまさにきらきらと光を遊ばす風の様で目の奥が広がる衝撃があった。

 

当時はカントリーの箱バンに所属していたため今思えばかなりバタ臭かったろう。知人のいないところでは運転しながら窓に膝をついつダルそうに運転していた。

山梨に入りコンビニに駐車し周りを見渡すと本当に自然が広がるのどかな町で、自分がここに住んでいたらどんな青春を過ごしていたんだろうと妄想しながらジュースを飲んだ。

翻る旗越しに山脈が広がって夕陽が落ちていくのは本当に虚無的な情緒があった。

 

そんな時によく聴いていたのがmoonchild。

(あのアー写は実家の近所の小牧山だと当時大きく言っていた)

実際どこでも聴いてたんだけど、特に山梨の雰囲気とはめちゃくちゃにマッチしていた。

「Too Much to Ask」なんか聴くと一瞬でtripできちゃう。鼻腔で感じるあの空気…。

今思えば、虚無って一種"あの世"的な側面があるのだろうか。

 

本日はそんなmoonchildの音楽を初めて直接観れた。

もう最高だった。kieferとの豪華な対バンでまさにawesoooooomeであった。

整理番号が良かったからもう、背にモーセ十戒できても知らない!と割と前の方で観た。

しばらくぶりの完全スタンディングライブで、人はもう凄い数であった。

(この先からネタバレも含みます)

 

始めにkieferの演奏。

虚無に揺蕩いながらも徐々に増す確かな熱を感じながら身体は乗っていた。

聴きながらドラムの樋口氏がフッと思い出された。

 

車で通ってた頃よく泊めさせてもらってて、その時に教えてもらった音楽を帰りに聴いてまた下道を下った。

彼の好きそうなビートだなあと改めて思ったのだろう。

それから、曲の間に何かを感じて思わずスマホを取り出した。

 

kieferが物凄く丁寧に旋律を一人奏でる。

綺麗な曲だなあって思っていたら聴き馴染みしかないイントロが流れた。

 

nujabeseの「feather」だ!!!!!!!!!!

 

くぅぅぅぅぅぅ。。。。。

まさかkieferの弾くこの曲を聴けるとは。。。。。

樋口氏と追悼ライブへ行ったのも懐かしい。(ナンパしてみろよぉ〜と言い合いそのまま帰った初クラブ)

 

脈々と音楽の血が受け継がれている場面にこうやって実際に立ち会えたというのは、私の生涯に於いてもかなり大きなことに感じた。

アレンジもね、本当に良かった…。。それからMCも。

 

その後20分の休憩があった。

風邪が治ったばかりか、昨日久しぶりに長距離チャリンコで走ったからか身体がバキバキで呼吸がしにくかった。

そして、久しぶりのスタンディングぎゅうぎゅう大人数でだいぶやられてしまっていた。

しかし、何としてでも見るのだ…!と何とか気を紛らわせながら時を待った。

 

ステージが消灯する。

わぁ!!!っと気持ちが持ち上がる。

ステージに三人が現れ、音が鳴った瞬間に完全に身体が生き返った。

そして、先程までずっとノイズに感じてしまっていた周囲が華やぐように揺れている。

最高、音楽big loveすぎだぜ…と音に乗っていた。

 

しかし、中盤が過ぎた頃身体に限界を感じた。

本来気持ちの良い低音さえ内臓に悪く響いてしまう。なんなんだ…。

私のライブ体力は完全に落ちている、こんなこと本当にあるんだと朦朧としながら人をかき分けてホールから通路に出た。

すると「大丈夫ですか?」と水を渡された。

 

壁にもたれ頂いた水を飲んでいると「よかったら座ってください」と椅子に座らせてもらった。

酸欠かもしれないです…と伝えると「今日はキャパがコロナ前に戻ってるので絶対空気薄いですよねぇ」と応えてくれた。

それから気づけばお互いの好きな音楽について話していた。

 

もらった水を少しずつ飲みながら通路でライブを聴き、スタッフのお兄さんとの談笑。

スタッフのお兄さんとは何故か出自の話までして、お互いの感じる東京の有難さを語った。

 

そのスタッフのお兄さんは週5で働きながら休みの日、時には有休を取ってイベント系の仕事をしていると聞きやすいように屈んで話してくれた。

 

「新しい好きなことをちゃんと発見していきたいんですよねえ」とスタッフのお兄さんは言った。

わかりみすぎるー…!と思いながらも、凄くポジティブなエネルギーを分けてもらえた実感がした。

冷笑の向こう側の会話ほど楽しいものはない。

 

moonchildも凄く良いですねって仰ったため、ざっくりおすすめポイントをお伝えすると「やっぱ音楽好きなんだね〜、何かそんな感じがしましたあ!」とまた屈んで言ってくれた。

中が暑過ぎて上着を斜めかけの小さなバッグに結び、それでも暑くて上着2を腰に巻いていたから何かのヲタク感が醸し出してしまっていたのだろうか。

 

結局何故か相談ごとにも乗って頂き(なんで!?)次のお仕事でその場を離れられたため私も中に戻った。ちゃんと挨拶ができなかったな。本当に素晴らしい美青年であった…。

 

空になったペットボトルを握りながら、無事最高のステージを楽しめた。あんちゃんのおかげだぜ…。

ロビーに戻り来ているはずのフルートの佐々木さんに連絡をして突っ立っていた。

すると「よっ!」と声をかけられた。

 

樋口氏!!!!!

 

やっぱ来てると思ったー!と凄く嬉しかった。

やっぱしな〜!!

また感想会をやろうと別れた。幡ヶ谷にてまた集合である。

 

その後物販を大量購入されていた佐々木さんと合流した。

すると一部で何か盛り上がっている。

 

kiefer氏だ!!!!!

そして、バンドメンバーのおふたり!!!!!

 

佐々木氏は何やら仕事の連絡が入ったと慌しくも颯爽とその場を去られた。

え、kiefer氏いる、帰る?どうしよ…!

 

そうはならなかった。

以前Questloveの一件があったからだ。

伝えたいことだけ伝えて帰ろうと決めた。

 

ベースのSolo氏と目が合い勢いでexcuseme?と声をかけていた。

そこからは何故か自然と会話することができた。

あ…!

 

バイト先の果敢な英語接客が役に立ったぁぁ……!!

 

自分の好きなことや、相手に聞きたいこと、そしてこれだけは伝えねばならないという気持ちがあれば、中学英語でも何とか伝えることができたのだ。めちゃくちゃに優しいお方であった。

まるで彼とは恐れ多くも波長が合ったのか、こんなキャッチボールできたっけ?ってくらい話せた。

あ…!

 

プラトューンを友人とその友人のニューヨーカーとボイスチャットで話してたからだぁぁ……!!

 

有難い…。非常に有難い訓練をさせてもらっていた…。

最後に日本で美味い食べ物何?と聞かれ「DOTENIDON!」と答えるわけにはいかないから「TENPURA!」とさしてそんなに食べない日本飯を答えてしまったのだけ悔いる…。

なんで、天ぷらよ。

だったら「MATSUYA〜〜!Do you know GYUDON?」くらいのその国の庶民的な答えの方が良かったかもしれない。

天ぷらて。

 

その後ミーハー丸裸にkiefer氏にバッグにサインも書いて頂き、辿々しいブロークンイングリッシュで何とか今日のライブの感謝を伝えることができた。

彼もまた病み上がりということで、お互い元気になろうと別れた。

 

最後にまさかのご本人たちと話せるとはYouTubeを見ていた自分は思っていなかったので嬉しかった。

本当にまた世界がどうなるかはわからないからね。

 

音楽はまるで不思議な箱でもある。

開けばその時の情景が走馬灯の様に脳にたなびく。

人との記憶、場所での記憶、気持ちにある記憶。

その時が宿っているのだ。

今月リリースされる新譜には、まさに彼らに影響された曲が収録されている。

やっとできるようになってきたぜ。絶対に聴いてほしいー!!