百均で渋ってんじゃねえ!という学び
休みの日が来るといつも思い出す。
あ、紅茶の茶こし器買わなきゃ。
叔父さんから茶葉を随分前にもらったのだが、茶こし器(調べたらストレーナー)を未だに入手できていない。
きっと茶こしで飲んでも美味いのだろうが、折角良い茶葉なため封をあけずとってある。
よし、今日こそ買うぞ。
そう意気込み私は吉祥寺へと踊り出た。
そんなんロフトに行けばすぐ買えるっしょ?
そうお思いの貴方、喝ッッッ!!!!!
それはそうなのだが、何千円とするではないか。
それはあまりにも身の丈に合っていない。
そして、私は噂で聞いたのである。
百均にごく稀に茶こし器が現れると。
これはもうね、色違いポケモンを探しに行くに等しいわけである。
(これできっと私の腰の重い所以を察したであろう)
昼を過ぎた曇り空にスンとした面で屹立しているヨドバシカメラ。
今日こそはあるんだろうな…!?と私は睨みながら腹部へと入り込んだ。
無い。やっぱり無い。
コーヒーミルなど、エスプレッソの何かする特殊な棒など、レアアイテムが少量陳列されているも、無い。
くそう。こうなったらもう茶こしでいっか。
先程までのこだわりは何処へといった調子で、それを念頭に店を回った。
ヨドバシの上にあるダイソーはかなり広大で、並ぶ便利グッズの山々の一つ一つに自分が関係しているかどうか確かめながら歩いた。
割と関係ねぇやってものが多いのだ。
そして、私は以下のアイテムの購入を吟味することにした。
・冷蔵庫に紅茶をストックする用の容器
・部屋用スリッパ
・(良いのがあったら)マグカップ
よし、さっと買って帰ろう。
さっき図書館で借りた本も読みたいし、スプラのアプデもやんなきゃだ。
さあ、購入祭りじゃ〜!
その時の私はまだヨドバシに永遠の悪魔が潜んでいるなど知る由もなかった。
あ〜、容器、これねえ。
でも、百均のって、何か心配だなあ。
なんか可愛ゆくもないしなぁ。
無印の方がもしかしたら良いかもしれない。
保留!!
ああ、スリッパねえ。
当たり前のことだが、サイズはないから足先が貫通できるやつでぇ。
でもまって、部屋しばらく掃除機かけてないし、今買っても汚れるだけじゃね?
保留!!
マグカップねぇ。
家にあることね?
何かこの探してる時間でアニメ1話見れたことね?
保留!!!!!
………
おい、百均で渋るな………。
まあ、そうなのである。私は百均でさえも渋る人間なのである。
間違えたく無い。100%で当てて買いたい。
百均での敗北ほど虚しいものはない。
私は諦めた。
下に降りるボタンを押して、帰れるかわからない8階にて震えていた。
そんな時、背の方で颯爽と歩く人影が見えて、反射で振り返った。
すると、ぼんやりと「良さげ」な店が視界に入った。
よし、行ってみよう。
複数の悪魔の手を払いそのお店へ向かった。
なんだここは!!!
先程のダイソーから一気に情報の数が削ぎ落とされており、店内のBGMも音楽をやっている身からこんなこと言うのもなんだが、未来的な洒落っ気がある良い感じのものであった。
ここは上位互換のダイソーであった。
謂わばオトナダイソー。
店員さんの雰囲気も大人っぽい。先輩であろう女性スタッフがタメ口で後輩の男子スタッフに納品の数の愚痴を話している。
その二人の絶妙な温度の差がコントよりも「あざとくて何が悪いの?」の間合いで、こっそり見てしまった。
そして、茶こし器はなかった。
しかし、オトナストック容器に、オトナスリッパ、そして可愛ゆいティーポットがあった。
そして、なんと茶こしつきのマグボトルという水筒も存在していた。
容器がほしいのも、バイトの時毎度コンビニでアールグレイを買ってしまうため、部屋で常備して出かける時は水筒に入れて持っ行き節約を図るというのが目的であった。
それ故に、茶こしつきのマグボトルは光って見えた。
どうせ何に関しても壊れても使えなくなるまで一生使うであろう。
なば、プラス300円は可である!!
さあ、店内に跋扈す最高アイテムを今かき集めるのだ!!!!!
え!?なんこれ。
形もいい感じに可愛ゆなストック容器!!
500円!買い!!!
ああ、スリッパというよりもルームシューズね。
300円!
買い〜〜!!
え!?なんこれ、ティーポットも良いけど、この取手の付いてないマグも良いぞ…!!
ああ、一旦保留!!
さあさあ、この茶こしつきのマグボトルね。
ああ、500ml無いのか…。
他は?お!700ml!!これはアツい!!
え、でもまって、重くね?
まあ、洗えばペットボトルでいっか。
無し!!!
あれ、ティーポットもさ、あれだなあ。
やっぱ茶こし器で飲んだ方が絶対数は高いだろうし、妥協じゃね?
マグも良いけど、買うならいっそある程度食器を揃えるくらいの覚悟があった方がよくね?
却下!!!
カゴはだいぶ軽くなっていた。
もう、ルームシューズと容器とディフューザーしか入ってない。
………
………ディフューザー!?!?!?
あ、そうだったそうだった。
アロマディフューザー【アールグレイ】が500円で売っていたのだ。
私には【アールグレイ】と書いてあるものは無心でひとまずカゴに入れるきらいがあった。
サンプルの香りは近くも遠くもないような、アールグレイの香りがして、買い〜〜〜!!!となった。
ここまで来ると脳も馬鹿になるのである。
部屋がアールグレイになるなば、水飲んでもそれはもうアールグレイを飲んでいることになるんじゃね?
でも、実際アールグレイはクッキーが好きなんだよな。茶葉を小麦粉と焼いておくれ。
だったら、無印か西友に行くか?
ああ、もう時間がどんどんと溶けていく…。
結果、ストック用の容器、ルームシューズ、アールグレイをレジを通した。
しかし、思ってしまった「あれ、容器って結局持ち運ばないし、百均でよくね?」と。
店員さんに大謝りしてストック用の容器をすすすと元の場所に戻してレジへ再度向かった。
買ったな。
右手にルームシューズ、左手にはアロマディフューザー【アールグレイ】。
………アロマディフューザー
………【アールグレイ】!?!?!?
へいへいへい、絶対後悔するぜ?てか、その前に部屋を何とかしようぜ。
頭の上にいる仙人にタコ殴りにされながら帰路についた。
街灯の減っていく道の中で、ふらっと見ていた収納系のことを思い返していた。
もっと工夫したらよりすっきりした部屋になるんだろうなあ、と思いながら飽和状態の部屋へ帰る。
しかし、収納するっていっても実際何をしまおうか…と部屋を思い返すも特にしまうものがない。
溢れているのはなんだ…?
本本本漫画漫画雑誌雑誌。
そしてマウントレーニアの墓たち。
本棚じゃん!!!!!必要なもん!!!!!
そして、捨てろ!!!
(朝、目覚めると白雪の7人の小人の様に私を囲んでいた……)
帰宅後、俯瞰して部屋を見るとやばかった。
特に鬼の様にマウントレーニアの墓が綺麗に並んでいる。
コーヒーを一時解放したとんにこの様である。
よし、捨てよう。
その後、クイックルワイパーで泣く様に綺麗になった床にルームシューズをそっと置いて思った。
絶対に履けない!!!!!!!!!!
トンネルでいう出口の幅が足りない。
なぜならアタイは31cmの持ち主なのでね。
27cmも出口の幅さえあれば地面から身を守ってくれるというのに…トホホ。
ダイソーにて2時間弱を溶かした挙句稼働しているのは、アロマディフューザー【アールグレイ】だけであった。
ザ・本末転倒⭐︎
ハッピー虚無⭐︎
結果的に言わせてもらう。
アールグレイしか勝たん。
※尚矢張り胡散臭くて封印中
百均で渋ってんじゃねえ!という学びであった。